『からくりからくさ』梨木香歩 [つぶやき]
梨木香歩さんの『からくりからくさ』を久しぶりに読みました。
梨木さんの文章は、思慮深くて品があり、歴史や文化や民話をよく調べて物語の背景に絡めて書かれているので、読んでいて面白いし心が落ち着きます。
お話自体は、昔ながらの日本を感じさせる情景と、一方で複雑に張り巡らせた伏線が後から徐々に絡んで来てストーリーを編み出していく感じが、独特の世界を作って読むものを飽きさせません。
『からくりからくさ』は以前読了しましが、今月開催中の日本刺繍展の作家さんが梨木さんがお好きなのもあって、再度読んでみました。
“亡くなった祖母の残した古い家に同居する主人公とその友人たち、そして今はもう眠ってしまったがかつては主人公に多大な影響を与えた不思議な市松人形。その人形を中心に過去から脈々と続く人間関係と現代の彼女たちの人間関係が次第に絡まり、徐々に市松人形の本当の姿が解き明かされる”という話。
複雑な人間関係が解き明かされていくのももちろん面白いのだけれど、私が一番好きなのは(梨木さんのどの小説にも感じますが)、私たちが生き続けていくために必要な大切なことがメッセージとして根底にあるように感じられるところです。
『からくりからくさ』では“変容”がキーワードだと思います。
…とにかく深いです。
小説として作られた話…と表面だけ読むのではなく、ぜひメッセージを受け止めながら読みたい…そんな本です。
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